私の大好きなことはもちろんウインドサーフィン。
一年の大半を海ですごすようになって、１０年以上になる。
ウインドサーフィンを始めたきっかけは？ときかれれば、答えは「海が好きだから」。
だけど海が好きな理由をきかれたことはない。
それは父の影響だ。
私の父は生まれながらに破天荒で、風来坊の気もあった。若い頃は仕事を転々とし、映画館に入り浸り。そんな父も母と結婚する頃には某国立大学の助手をやっていた。一見堅そうな仕事だが、父は学会で地方へ行くたびに所持金がなくなるまで方々を観光して歩き、休みには趣味のつりを楽しんだ。大物がかかると持ち帰って母に魚拓をとってもらうのが常で、実家には黒鯛だの石鯛だのの魚拓が飾られていた。
しかし、末っ子の私が生まれる頃には、一転して父はモーレツに働いていた。休みの日に家にいないことはしばしばで、父と遊んだ思い出はほとんどない。
そんな父との数少ない思い出が、夏の海水浴である。
父は毎年、夏に自分の勤める大学の学生達を連れて海へ出かけた。実家のある滋賀県から車で京都や石川の海へ。子供の頃の私にとって、夏の２泊３日の海水浴は一年のメインイベントだった。夏休みなると指折り数えて楽しみにしていた。
浮き輪やボートの準備をするだけでわくわくした。海水浴にスイカ割り、夜は花火も楽しんだ。旅館の食事はおいしくて何より父と一緒に大勢の人とわいわいやっているのがとても楽しかった。大学生のお兄さん達はいやな顔をせず私達のおもりをしてくれた。
家に帰って撮ってきた８ミリをみんなで見るのも楽しかった。
「海は楽しいところ」そんな思いを父は私に教えてくれた。
それは今の私にとって何よりの財産である。
次の夏には年老いた父を連れて海へ行ってみようかと思う。